会社が役員から建物を借りる場合
役員が所有する不動産を自社の事務所として借りる場合があると思いますが、そのときに注意すべきことがあります。
賃料はいくらにする?
法人税は経済合理性を持った存在であるとして、時価(相場)で取引を行うことが原則となります。
一般的に第三者に貸すなら、どの程度の家賃になるかを基準として考えます。
とはいえ、自分の建物を自社に貸しますので、その基準よりも安く貸したり、逆に高く貸したりすることが考えられます。
相場より安い場合
第三者に貸すより安い賃料で自社に貸し付けた場合はどうなるでしょうか。
実際に法人が支払う一般的な賃料と相場との差額については、法人は得をしているため利益となります。
しかしながら、法人税の世界では相場で取引を行ったと考えるため、同額の支払家賃が発生します。
わかりやすく例をあげると、①相場家賃100 ②実際の家賃80 としますと、法人では以下の仕訳が計上されます。
支払家賃 80 / 現預金 80 → これが表面上の会計仕訳
支払家賃 20 / 雑収入 20 → これが法人税法上の仕訳(表には出てこない)
この法人税法上の仕訳は借方が損金、貸方が益金でプラマイ0になります。したがって会社の所得には影響はありません。
20はあくまで法人税法上の家賃であるため、消費税も対象外となります。
ちなみに役員の不動産収入は80になります。100ではありません。これは所得税法は対価(実際にもらった額)に課税するとなっているためです。法人税は時価課税、所得税は対価課税です。
相場より高い場合
次は第三者に貸すより高い家賃の場合はどうでしょうか。
①相場家賃 100 ②実際の家賃120 の場合で考えると
支払家賃120 / 現預金 120 → 会計上はこのような仕訳になりますが、法人税では違います。
役員報酬 20 / 支払家賃 20 → 法人税ではこの仕訳が追加されます。
この場合、通常家賃を超える部分20は役員報酬と認定されます。毎月同額のため定期同額給与に該当しますが、役員報酬の限度額を超える分や、あまりに高額すぎる部分があれば、その部分は損金不算入となります。
ただどちらにせよ、源泉徴収が必要になる(会社は家賃と思っているため源泉徴収していない)ため税務署に指摘を受けることは間違いないでしょう。
役員の所得税については、100が不動産収入で、20が給与収入になります。