個人事業主から法人成りした際の留意点
1. 消費税の課税事業者の判定
- 法人成りすると、新会社は「新設法人」となるため、基本的には2年間は消費税の免税事業者となります。
- ただし、以下の場合は設立初年度から課税事業者となる可能性があります。
- 資本金が1,000万円以上の場合
- 特定新規設立法人に該当する場合
- 課税事業者の選択、インボイス発行事業者になる場合
2. 法人と個人の所得税・住民税の違い
- 個人事業の利益は「所得税(累進課税:最大45%)」として課税されますが、法人化すると「法人税(通常15%~23.2%)」が適用されます。
- ただし、個人の場合は各種所得控除(基礎控除・青色申告特別控除など)がある一方で、法人化すると社長(自分)に支払う給与は「損金算入」できるため、全体の税負担を調整できます。
3. 給与(役員報酬)の決め方
- 役員報酬は「原則として年に一度のみ変更可能」であり、期中に変更すると損金不算入(経費計上不可)となるため、慎重に設定する必要があります。
- 法人成り後の利益予測を基に、適切な役員報酬額を決めることが重要です。
4. 法人住民税の均等割
- 個人事業では利益がなければ税金は発生しませんが、法人は「均等割」として最低でも7万円(地方自治体によって異なる)がかかります。
5. 個人事業の資産・負債の引継ぎ
- 個人事業で使用していた資産(車両・備品など)を法人に引き継ぐ場合、個人が法人に資産を売却しますが、その際、減価償却資産は譲渡所得、棚卸資産は事業所得に該当します。
- 事業用の借入金や未払金も法人に引き継ぐ場合は、金融機関と再契約が必要な場合があります。
6. 設立時の届出書類
- 法人設立後には、税務署・都道府県・市区町村に対して以下の届出が必要です。
- 法人設立届出書
- 青色申告の承認申請書
- 給与支払事務所等の開設届出書
- 源泉所得税の納期の特例の申請書(給与支払が少ない場合)
7. 社会保険の加入義務
- 法人は、社長1人でも「社会保険(健康保険・厚生年金)」への加入義務があります。
8. 個人の事業廃止届
- 法人成りした場合、個人事業の「廃業届」を税務署に提出する必要があります。
- 青色申告の取りやめ届出書も必要。
9. その他
個人事業を廃止した年分の所得を忘れずに確定申告する必要があります。